蔵干 — 表面の下に潜むエネルギー

May 1, 2026
地支蔵干四柱推命支の構造

メタデータを抱えたファイル

前回の記事では、12 地支を四柱推命(BaZi)の裏のレイヤーとして紹介しました。今回はそのレイヤーを開いて、各支の中身を見ていきます。

核心はこちらです。すべての地支には、1 つから 3 つの天干が内側に蔵されています。これを蔵干(ぞうかん、文字どおり「蔵された干」)と呼びます。

ファイルシステムのファイルに例えるとイメージしやすいでしょう。ファイル名は一つの情報(地支の主たる五行)を伝えますが、開いてみるとメタデータや埋め込みリソース、入れ子のコンテンツがあり、ファイル名だけでは見えなかった世界が広がっています。

「水」とラベルされた支に水と微量の木が含まれていることもあれば、「土」とラベルされた支に土・金・水の三つが入っていることもあります。表面のラベルはあくまで入り口です。


隠れたエネルギーの三段階

各地支の蔵干は、強さに応じて三段階に整理されます。

本気(ほんき、Primary Stem)「根のエネルギー」

その支の中で 最も支配的なエネルギー。地支の表面的な五行分類を決めるのもこれです。「寅は木の支」と言うとき、その本気は甲(陽木)であることを意味します。

本気は太い軸であり、全体を仕切ります。

中気(ちゅうき、Secondary Stem)「中間のエネルギー」

支援的なエネルギーで、存在感はあるものの本気ほど支配的ではありません。すべての支に中気があるわけではなく、「純粋な支」(子・卯)には中気がなく本気のみです。

中気はバックグラウンドプロセスのようなもの。常に動いて結果に影響を与えるものの、最初に目を引くわけではありません。

余気(よき、Tertiary Stem)「残気」

残るエネルギーや、芽生えつつあるエネルギーで、最もかすかな信号です。前の季節の名残や、次の季節の萌しと結びついていることが多いです。

本気が主旋律、中気がハーモニーだとすれば、余気は前の曲のかすかな余韻、あるいは次の曲の最初の音、と言えるでしょう。


蔵干一覧

この表は四柱推命の学習で最もよく参照される資料の一つです。ぜひブックマークしてください。

地支本気中気余気パターン
癸(陰水)純水
己(陰土)辛(陰金)癸(陰水)晩冬の土。金と水が残留
甲(陽木)丙(陽火)戊(陽土)早春の木。火が萌しはじめる
乙(陰木)純木
戊(陽土)乙(陰木)癸(陰水)晩春の土。木が衰え水が蔵される
丙(陽火)庚(陽金)戊(陽土)初夏の火。金が鍛えられる
丁(陰火)己(陰土)火の極盛。灰から土が生じる
己(陰土)丁(陰火)乙(陰木)晩夏の土。火が衰え木の名残が残る
庚(陽金)壬(陽水)戊(陽土)初秋の金。水が流れはじめる
辛(陰金)純金
戊(陽土)辛(陰金)丁(陰火)晩秋の土。金が残り火が蔵される
壬(陽水)甲(陽木)初冬の水。木の種が宿る
純粋な支

本当に「純粋」な支は二つだけ、つまり蔵干が一つしかない支です。 は癸(陰水)のみ、 は乙(陰木)のみ。流派によっては酉(辛・陰金のみ)も実質的に純粋とみなします。これらの純粋な支は最も濃密で混じり気のないエネルギーを持ちます。良くも悪くも、合や冲に巻き込まれた際の作用は明快で直接的です。


蔵干が重要な理由:「根」の概念

ここから蔵干が分析上不可欠になります。

四柱推命では、命式のいずれかの地支の蔵干に同じ五行が現れているとき、その天干は 「根(こん、Gēn)」を持つ と表現します。根のある天干は強く、根のない天干は「浮いている」状態で、存在はしても不安定です。土壌に根を張る樹木と、糸の切れた凧の違い、と言えば分かりやすいでしょう。

例: あなたの日干が甲(陽木)。命式の中に寅(虎)があり、その本気が甲(木)であれば、日干は深い根を持ちます。地に足がついた状態です。木の気はラベルだけでなく、命式の裏のレイヤーに錨を下ろしています。

もし命式の地支の蔵干に木が一切ないなら、甲の日干は無根。糸の切れた凧のように、存在はしていても他のエネルギーに圧倒されやすい状態です。

これは 日干の強弱判定 の中核メカニズムの一つで、四柱推命の解釈全体を駆動する考え方です。


蔵干と季節のロジック

蔵干の配当は恣意的ではなく、季節の遷移ロジックに従っています。

初気の支(寅・巳・申・亥)は新しい季節の始まりに位置するため、蔵干が三つ含まれます。前の季節の気が衰え、新しい季節の気が立ち上がり、土がその橋渡しをするからです。

旺気の支(子・卯・午・酉)は季節の盛りで、純粋に近づきます。混じり気はなく、五行が最も濃密に表れる場所です(午は余気として己を含みます)。

末気の支(丑・辰・未・戌、すなわち四つの土支)は季節の境目に座します。去りゆく季節の名残、土そのものの安定する力、そして時には次の季節の種を抱えます。これらは「貯蔵の支」であり、上級の四柱推命では 墓庫(ぼこ、Mù Kù) と呼ばれます。条件が揃えばエネルギーを閉じ込めたり、解き放ったりできる容器です。

土支は墓庫

四つの土支(丑・辰・未・戌)はしばしば「四つの墓庫」と呼ばれます。それぞれ特定の五行を蔵します。辰は水を、未は木を、戌は火を、丑は金を蔵します。特定条件下、特に対応する墓庫同士が冲しあうと、これらの蔵が「開く」ことがあり、内部のエネルギーが解放されます。これは後の上級概念ですが、メタファーとして知っておくと役立ちます。


自分の命式で蔵干を読む

Astrobloom の命式画面では、各地支に蔵干が表示されます。この情報の使い方の手始めは以下の通りです。

  1. 日干の根を探す。 あなたの日干の五行は、四つの地支のどこかに蔵干として現れていますか。あれば、根があります。多ければ多いほど土台は強固です
  2. 日支の蔵干を確認する。 日干の真下にある地支は「日支」あるいは「配偶宮」と呼ばれます。その蔵干は、あなたの内なる自己に最も近いエネルギー、日々の体験を支えたり複雑にしたりする要素を表します
  3. 多五行の複雑さに注目する。 蔵干が三つある地支は、純粋な支よりニュアンスのあるエネルギーを生みます。月支が寅(虎)なら、扱うのは木だけでなく、同じ位置に火の萌しと土の安定も同居しています

まとめ

  • すべての地支には 1〜3 の蔵干 が含まれ、本気・中気・余気という三段階で組織されます
  • 本気 が地支の表面五行を定め、中気・余気が深さと複雑さを加えます
  • 天干の五行が地支の蔵干に現れるとき、その天干は 「根」 を持ち、強さと安定が生まれます
  • 純粋な支(子・卯、また酉も)は蔵干が一つで、濃密で混じり気がありません
  • 土支(丑・辰・未・戌)は墓庫として、季節のエネルギーを蔵し橋渡しをします
  • 蔵干は 季節のロジック に従い、初気の支は混合、旺気の支は集中の特性を持ちます

次回、地支は静止していません。互いに関わりあいます。最も和やかな関係から始めましょう。六合(りくごう、Liù Hé) です。