地支入門 — 子から亥までの12支
隠れたレイヤー
前のシリーズでは、十干(天干)に触れました。各柱の上段に位置する、はっきりと見える文字です。天干が四柱推命(BaZi)の「表のレイヤー」だとすれば、地支(じし)は「裏のレイヤー」です。より深く、複雑で、見た目以上に多くの情報を抱えています。
地支は 12 個 あり、絶え間なく循環します。
子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)
天干をプログラムの公開 API(型付きで明快、外から見える)に例えるなら、地支は内部モジュールに近い存在です。状態を多く保持し、隠れた依存関係を持ち、実際の振る舞いを動かしています。
西洋占星術と 12 支の対応
西洋占星術に親しんでいる方なら、「12 のシンボルが時間に対応する」という考え方はすでにお馴染みでしょう。12 星座は太陽年を 12 区分に分け、それぞれに元型を持たせます。12 地支も構造的によく似ています。
- 双方とも 12 のシンボルを使う
- 双方とも 1 年の月に対応する
- 双方とも元型的な意味を担う
- 双方ともアスペクト/関係を通じて互いに影響し合う
大きな違いは、地支は 1 日の時刻 にも対応する点です(各地支が 2 時間枠を司ります)。さらに星座とは違い、地支には 蔵干(ぞうかん) という入れ子状のエネルギーが含まれており、見た目以上に情報密度が高いのです。詳しくは次の記事でお話しします。
12 地支一覧
以下が 12 支それぞれの基本属性です。
| 地支 | 干支動物 | 五行 | 陰陽 | 月(節入り基準) | 時刻 |
|---|---|---|---|---|---|
| 子(ね) | 鼠 | 水 | 陽 | 12 月節 | 23:00–01:00 |
| 丑(うし) | 牛 | 土 | 陰 | 1 月節 | 01:00–03:00 |
| 寅(とら) | 虎 | 陽木 | 陽 | 2 月節(立春) | 03:00–05:00 |
| 卯(う) | 兎 | 木 | 陰 | 3 月節 | 05:00–07:00 |
| 辰(たつ) | 龍 | 土 | 陽 | 4 月節 | 07:00–09:00 |
| 巳(み) | 蛇 | 火 | 陰 | 5 月節 | 09:00–11:00 |
| 午(うま) | 馬 | 火 | 陽 | 6 月節 | 11:00–13:00 |
| 未(ひつじ) | 羊 | 土 | 陰 | 7 月節 | 13:00–15:00 |
| 申(さる) | 猿 | 金 | 陽 | 8 月節 | 15:00–17:00 |
| 酉(とり) | 鶏 | 金 | 陰 | 9 月節 | 17:00–19:00 |
| 戌(いぬ) | 犬 | 土 | 陽 | 10 月節 | 19:00–21:00 |
| 亥(い) | 猪 | 水 | 陰 | 11 月節 | 21:00–23:00 |
土が四度(丑・辰・未・戌)登場する点に注目してください。他のどの五行よりも多いのです。これら四支はいずれも季節の境目(冬から春へ、春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ)に位置します。中国哲学において土の役割は変化を安定させることであり、こうした節目の月こそ、その安定化のはたらきが最も求められる場所なのです。
時間としての地支:時刻と月
各地支は 1 日の 2 時間枠を司ります。サイクルは 23:00 の子(ね、鼠の刻)から始まり、深夜に日付が切り替わる瞬間として一日を巡ります。
そのため四柱推命(八字、はちじ=「八つの文字」)では、生まれた時刻が重要になります。時柱はあなたが生まれた 2 時間枠を司る地支によって決まるからです。午前 10 時生まれの人は巳(み、蛇)の刻、午後 4 時生まれの人は申(さる、猿)の刻になります。
各地支は太陽年における月にも対応します。重要な点として、月のサイクルは 寅(とら、立春)から始まり、子(ね)の 12 月から始まるわけではありません。これは伝統的な暦が立春(2 月 4 日前後)を一年の起点と定めているためです。
干支動物との関わり
そう、これらは中国の十二支動物です。あなたの「干支動物」は、生まれた年の年柱の地支に過ぎません。ただし四柱推命の分析において、動物のラベルはあくまで補助的な目印です。本当に大切なのは地支の 五行・陰陽・蔵干 の中身です。
動物名は覚えやすい記憶の手がかりですが、本来の情報を覆い隠さないようにしましょう。たとえば「寅年生まれ」の方は、実際には陽の木の気が年柱下段を司る方、と捉えるほうが本質に近いのです。
中国の干支は 1 月 1 日や旧正月で切り替わるわけではありません。四柱推命では 立春(おおむね 2 月 3〜5 日)を境に切り替わります。そのため 1 月や 2 月初旬生まれの方は、実際の地支(つまり干支動物)が暦の前年に属することがあります。Astrobloom では自動で計算しています。
天干と地支:表と裏
四柱推命の学習を支えてくれる概念モデルがこちらです。
- 天干 = 表のレイヤー。外から見える姿。エネルギーがどう外に表れるか。クリーンで単一五行、わかりやすい
- 地支 = 裏のレイヤー。その下にあるもの。エネルギーが深層でどう動いているか。複雑で多五行、内部に蔵干を抱える
命式凡例:天干(上段)— 甲(陽木)・丙(陽火)・戊(陽土)・壬(陽水)。地支(下段)— 子(鼠/水)・寅(虎/木)・午(馬/火)・戌(犬/土)。
このサンプル命式では、上段の天干は分かりやすい物語を語ります。陽木・陽火・陽土・陽水。四つの異なる五行、すべて陽。
下段の地支はもっと深い物語を語ります。それを読み解くには、各地支の中にある蔵干を開かなくてはなりません。これが次の記事のテーマです。
地支は思っている以上に重要です
初学者は天干に目を向けがちです。シンプルだからです。けれども熟練の実践者ほど、分析の中心が地支にあると知っています。
- 月支は命式で最も重要な一文字。日干が強いか弱いかを決める季節的文脈を据えるのは月支です
- 地支同士の関係(合・冲・刑など)は、命式の動的な張力と流れを生み出します
- 地支の 蔵干 は、天干に「根(こん)」があるかどうかを決めます。これは強弱を測るうえで欠かせない概念です
- 時運分析(年運・月運・日運)は、主に地支同士の相互作用によって駆動されます
天干が見出しなら、地支は本文です。両方が必要ですが、深さは地支の側にあります。
まとめ
- 12 地支 は子から亥まで循環し、それぞれ動物・五行・陰陽・月・2 時間枠の時刻に紐づきます
- 地支は四柱推命の 裏のレイヤー として機能し、上段の天干よりも複雑で情報密度が高い存在です
- 四つの土支(丑・辰・未・戌)は季節の節目を担い、土が変化を安定させます
- 干支動物はあくまで生まれ年の地支のラベルに過ぎず、五行・陰陽・蔵干の中身こそが分析の本体です
- 地支には 蔵干 が含まれ、各支は複数のエネルギーを抱える容器となっています
次回はその容器を開けます。蔵干 を見れば、各地支が表面の五行表記をはるかに超える存在であることが分かるでしょう。